エル・グレコ展(2012)
エル・グレコ(1607-1613)『無原罪の御宿り』 In Wikimedia Commons
東京都美術館ホームページ 【特別展】エル・グレコ展
- 開催年月日: 2012/10/16-2013/4/7
- 開催地: 国立国際美術館、東京都美術館
- 主催: NHK、NHKプロモーション、朝日新聞社ほか
- 後援: スペイン政府観光局、エールフランス航空、全日本空輸
鑑賞メモ
エル・グレコ(1579-1582)「フェリペ二世の夢」 In Wikimedia Commons
展示数51点。世界中の37の美術館や個人から集めたエル・グレコ作品を一同に展示するという贅沢な構成。展示会サブタイトルがついていないのも潔くて良い。その51点も、とにかくエル・グレコの有名作品(本人による模写や縮小版含む)ばかり。『受胎告知』だけでも3点もきています。
- 第1章-1 肖像画家エル・グレコ
- 第1章-2 肖像画としての聖人像
- 第1章-3 見えるものと見えないもの
- 第2章 クレタからイタリア、そしてスペインへ
- 第3章 トレドでの宗教画:説話と祈り
- 第4章 近代芸術家エル・グレコの祭壇画:画家、建築家として
「フェリペ二世の夢」はトレヴァー=ローパー『ハプスブルク家と芸術家たち』の書評でもご紹介しましたが、まさか記事を書いてすぐに本物を観られるとは思っていなかったので、今回いちばん楽しみにしていました。手前中央の黒いマントの人物がフェリペ二世。かつては「レパントの海戦」の寓意とされ、その奥の人物たちもグランヴェル枢機卿やアウストリア公ドン・ファンとされていましたが、現在はこの絵にレパントの要素は無く、フェリペ二世以外は人物の特定もされていないと考えられているそうです。
エル・グレコ(1600頃)「フリアン・ロメロと守護聖人」 In Wikimedia Commons
フリアン・ロメロはスペインの将軍で、シラーの『オランダ独立史』でも、エグモント伯・ホールネ伯の処刑シーンに登場しています。これは将軍の死後、英雄としての姿を描いたものです。白いマントには胸にサンティアゴ十字がついています。守護聖人が誰かは諸説あるとのことですが、百合紋のローブからも、聖王ルイなどフランス関係者が挙げられてるぽいですね。『フェリペ二世の夢』同様、この絵もティッツィアーノの『グローリア』との関連性が指摘されていました。
エル・グレコ(1571-72)「盲人を癒すキリスト」 In Wikimedia Commons
この「盲人を癒すキリスト」はいくつかあるバージョンのうち、パルマ国立美術館所蔵のものです。エル・グレコの後援者でもあったファルネーゼ家の所有で、このバージョンにのみ左端に当世風の若者の顔が描き入れられてあることから、これをアレサンドロ・ファルネーゼと考える説もあるようです。描かれたのが1572年前後だとすると、アレサンドロがネーデルランドに来る6年ほど前の姿ということになります。 展示会関連グッズは、なんだか縦長のものが多かったです(笑)。残念ながら、商業ベースでキレイめ(女子やイケメン)のものがピックアップされるので、「フェリペ二世の夢」はポストカードすらありませんでした。 図録は他の図録とくらべて、半分とはいわないまでも評論が多く得した気分になります。グレコが余白に落書き?した本、白黒だけどスペイン各地の写真などもおまけ的に載っています。「永久保存版」の謳い文句に偽り無し。エル・グレコに興味があるなら図録もぜひ入手を。