フロールの戦い(1627) 歴史再現イベント Slag om Grolle 2008
観光客の子供が描いた絵…だそうですが、やけに味があって上手い。
オランダの軍制改革や17世紀前半の攻囲戦の様子がよくわかる歴史再現イベントを写真でご紹介します。(※このページの写真は管理人が参加・撮影したものではありません)。管理人は2017年第6回を観てきましたが、個人情報等保護の観点から自分で撮影した写真は使わず、2008年第2回のウィキメディア画像を使用します。
フロールの街では2005年から、1627年のオランイェ公フレデリク=ヘンドリクによる攻囲戦を模した、「Slag om Grolle (SoG)」という歴史再現イベントを開催しています。 このページの画像は2008年10月17-18-19日の3日間にわたっておこなわれたものです。ヨーロッパ各国から専門の役者(再現イベントサークルのようなものかと思われます)を数百人招き、期間中、役者たちは実際の戦闘シーンだけではなく、電気ガスなどを極力使わず当時の衣食住までを再現します。観客数も30,000人を越え、フロールの街中にも小動物が放されたり、乞食・辻芸人などがうろうろするなど、当時の様子に近づけられます。
八十年戦争期の攻囲戦に投入される兵力は、攻め手は延べ人数では数万人規模ではあります。が、攻囲が大掛かりになり防衛線が長くなればなるほど、多方向から塹壕を掘りつつじわじわと攻めるため、必然的に兵力がかなり細かく分断されます。守り手側では、籠城と糧食のバランスもあり数千人が限度で、その兵もやはり各防御ポイントに分散します。そのため実際に互いの兵同士がぶつかる白兵戦は、スカーミッシュ(小競り合い)と呼ばれる、数十人からせいぜい千人程度までの規模でおこなわれます。万単位がぶつかる大規模な野戦に比べると、確かに数としての迫力には欠けますが、このような再現イベントでは、兵の一人一人がシナリオと役割を分担する細かい演出が可能です。
※ このページに使用しているすべての画像は、ウィキメディア・コモンズ内Kweniston氏のクリエイティブ・コモンズ3.0ライセンスに基づくものです。クレジットの表示により複製や頒布はフリーです。
SoG 2008 ウィキメディアギャラリー
上記ライセンス画像の中から、特徴のわかりやすいものを、時系列と思われる順にピックアップしました。クリックでウィキメディアの拡大画像が表示されます。
戦場に向かって行軍するオランダ銃兵。鎧ではなく布地の服で軽装です。斜め掛けしているのは火薬入れ。
同じくオランダ槍兵。銃兵との装備の違いが明らかです。胸甲に冑をかぶっています。
既に鼻血メイクや出血メイクまでしている念の入れよう。左の兵の冑は、ちょっと後の時代の、イングランド内戦でよく使われたタイプです。
こちらはスペイン騎兵。イベント初回の2005年には騎兵ナシでしたが、2回めの2008年から騎兵も導入されたそうです。左の渋い司令官は比較的軽装ですね(自分は突撃しないんでしょう)。中央の騎兵はさすがのフルアーマー。
出番待ちのスコットランド連隊のみなさん。各国連隊は、その国の役者さんが演じてるようです。
テント内で準備中のドイツ連隊のみなさん。真ん中の青地に王冠はスウェーデン軍旗にも見えるんだけど…?
気合入れて槍教練中のオランダ兵のみなさん。けっこう若いですね。長槍は長さも5m前後と長いですが、こうして見ると太さもけっこうあります。
槍兵が塹壕を掘っています。オランダ軍では、一般の兵士が塹壕堀りもおこないます。中央にいるのは監督の下士官でしょうか。
オランダ兵の整列の様子。後ろにオランダ軍旗と砲が見えます。ちなみに当時はまだこんなそろった制服ではないです。2008年にこの写真を撮った人は、2017年の管理人と逆側から撮ったと思われます。オランダ・スペインの位置が逆でした。
まずは砲兵の一斉射撃。戦闘開始。
ちょっと人数少なめなのでわかりにくいですが、オランダ式大隊のフォーメーション。長槍兵の周りを銃兵で囲んでいます。大砲を撃った後の煙がまだ立ち込めてます。
槍兵を守る銃兵、銃兵を守る槍兵。理想的調和っていうか…とにかくいい画です! 『アラトリステ』の映画もこんな感じのシーンありました。
オランダ軍の銃兵、第一列の発射。
動画じゃないのでわかりにくいですが、第二列の発射。「反転行進射撃」、カウンターマーチですね。
こちらはスペイン兵。古参兵がかっこよすぎる。
同じくスペイン兵。手前の銃兵の、火縄・銃架・火薬入れなどなど、装備がわかりやすく写ってます。ホントに戦場はこれくらいに近いです。役者さんには手を伸ばしたら触れそうな感じでした。
スペイン騎兵号令待ち中。みなさんちゃんとヒゲも伸ばしてきてますね。こちらもかっこいい一枚。
スペイン歩兵の前進。行進時の槍の構え方に注目。
スペイン軍突撃~!
オランダ兵と激突します。
さっき塹壕を掘っていた別な一角でも小競り合いが起こっています。なんかすごいどつかれてる。実際に見た感じでは、とにかくスカーミッシュは同時多発です。ポジショニングした場所によっては、対角線側がまったく見えないこともあります。
スペイン軍騎兵投入! 「抜刀突撃」、サーベルチャージです。2017年は砲撃の後、騎兵突撃が最初で、最後に歩兵でした。
この画もすごくいいです。実際はこれくらいカオスなはず。しかも良く見ると、酒保商人のオバちゃんまで巻き込まれてます。真ん中ちょい左の、カゴ背負ってるのがそうです。← これは現場で見てわかりましたが、従軍看護婦の役割をしているようです。けが人に水を飲ませたり、介抱したりしていました。
戦いもたけなわ。銃床で殴りにかかってます。死体役のみなさんも踏まれそう…。
ブルゴーニュ十字旗を掲げたスペインテルシオ。逃亡を企てた兵の射殺シーン。ここまで細部にこだわってるのはスゴい。2017年、このような懲罰シーンには出会えませんでしたが、近くに従軍司祭がうろうろしていて、死体役の皆さんに祈りを捧げて回っていたのは見ました。
戦い終わって…。おつかれさま。
夜は野営も再現。寒そうです。真ん中のジーパンのおねーちゃんは飛び入りの一般人ぽい。
病人役と軍医役まで居ます。凝ってます。
「Grols Kanon」、フロールの大砲。フレデリク=ヘンドリクが戦勝記念に街に置いて行った、当時の大砲現物そのものです。これも実際にイベントで使われるそうです。
最後は教会の美しい堡塁型ステンドグラスで締め。