特別展 とことん見せます!富士美の西洋絵画
※ 訪問記は2017年1月時点の情報です。
In Wikimedia Commons (Public domain)
とことん見せます!富士美の西洋絵画 〜日本最大級の西洋絵画コレクション、全貌公開!〜
2017年1月5日(木)~2017年3月20日(月・祝)東京富士美術館 公式サイト
一般: 800円 火~日: 10:00-17:00
JR八王子駅からさらにバスで20分。遠さがネックで、都内在住時には結局一度も足を運ばなかったのですが、この度、八王子市政100周年記念の一環として、所蔵している全275点の西洋絵画を全公開ということで念願の初訪問を果たしました。『開館史上、最大級』を謳った看板に偽り無しの豪華展示会。常設展価格で入れます。
なぜに念願かといえば、ミヒール・ファン・ミーレフェルト(しかも工房製ではない)によるナッサウ伯マウリッツの肖像を所蔵しているのは、管理人の知る中では日本ではここだけではないでしょうか。しかも前回の公開が2009年と、マイナーがゆえになかなか表に出てこないので、今回は久々のお目見えだったのです。
当サイト内ではWikimediaに出ていない写真の公開は差し控えているため、公式サイトのリンクからのご紹介です。管理人もオランダやインターネットで相当数のミーレフェルトを観ましたが、このマウリッツ、他の肖像と比べてそこはかとない違和感を感じる…。そう、まずは鎧姿ではなく、肩帯やガーター勲章等、軍人を思わせるアイテムが一つも描き入れられていない、全身黒の普段着姿。しかも若い。ミーレフェルト(工房含む)作品としてはおそらく最も若い頃を描いたもののひとつで、20代後半くらいでしょうか。この所蔵品の正確な制作年代がわかっていませんが、1613年の全身肖像画の後に、過去を想像して描かれたものと考えるほうが自然とは思います。しかしミーレフェルト本人の筆だとしたら、敢えて「軍人姿ではないマウリッツ」をいつ頃誰が何の意図で描かせたか、楽しい仮説はたくさん立てられそうです(家族?宗教関係者?女性?)
Anthony van Dyck (1631/32) In Wikimedia Commons (Public domain)
もう一点。ヴァン・ダイクの《アマリア・ファン・ソルムス=ブランウェルスの肖像》。オランイェ公妃アマーリアを描いた作品です。もともとはオランイェ公フレデリク=ヘンドリクと夫婦対の肖像画で、世界に二組しか存在していません。ここに挙げた画像は、もう一対のプラド美術館(マドリード)にあるもの。富士美のアマーリアは1629年の作品で、プラドより2年ほど早く描かれているためオリジナルといえそうです。プラドには一対で揃っているんですが、残念ながら富士美のアマーリアとペアのフレデリク=ヘンドリクは、遠く海を隔ててアメリカにあります。
逆に富士美に対で所蔵されているのが、フェリペ三世四世の親子肖像画。カスパール・デ・クライエルによる全身肖像画です。
19世紀の歴史画で、この時代を扱ったものでも面白いものが。アレッサンドル=エヴァリスト・フラゴナールのアンリ四世です。 もちろん、管理人は上に挙げた絵画たちを観に行ったわけですが、以下には、Wikimediaにあるもののうち、16-17世紀絵画を中心に挙げていきます。
Lucas Cranach the Elder (1533) In Wikimedia Commons (Public domain)
《ザクセン選帝侯ヨハン・フリードリヒ豪胆公の肖像》。とりあえず、いきなりクラーナハがあって驚きます。
Frans Hals (1633) In Wikimedia Commons (Public domain)
《男の肖像》。クラーナハからちょうど100年後のフランス・ハルス。
Jan Brueghel the Elder (1598) In Wikimedia Commons (Public domain)
《市場に赴く農民のいる風景》。ヤン・ブリューゲル父のほう。「十二年休戦期の南ネーデルランド執政府」にも挙げているような、峠から城を臨む風景です。テルヴューレン城でしょうか?
Pieter Brueghel the Younger (1630) In Wikimedia Commons (Public domain)
《農民の結婚式》。ピーテル・ブリューゲル子。1630年作ですが、50年くらい前の絵画のタッチに見えます。
Pieter Brueghel the Younger (17th century) In Wikimedia Commons (Public domain)
《雪中の狩人》。こちらもピーテル・ブリューゲル子。
Peter Paul Rubens (1622) In Wikimedia Commons (Public domain)
《コンスタンティヌスの結婚》。ルーベンスも1枚。この画像は個人所有の同じもの。
Anthony van Dyck (circa 1638) In Wikimedia Commons (Public domain)
《ベッドフォード伯爵夫人 アン・カーの肖像》。ヴァン・ダイクによる彼女をモデルにした肖像画は世界に4枚しかないそうですが、こちらはそのうち、イギリスのペットワース・ハウス蔵の青服バージョン。富士美のはピンクのドレスです。当特別展の図録の表紙にもなっており、マスターピース扱いとされている一枚。
ところでその図録は800円と安価ですが、全275枚載っているわけではなくだいぶ絞ってあったので、管理人は5000円の名品選集のほうを購入しました。 Wikimediaにあまり枚数が無かったのが残念ですが、ジャンルでは肖像画と風景画が多く、風俗画や静物画などは相対的に少な目です。国別だと、フランス絵画とイギリス絵画の割合が多く、イタリア・スペインなど南が少ないですね。同じ画家のを何枚も、というよりも、202作家・275点という数字からもわかるとおり、とにかく数多くの画家のものを少ない枚数ずつ、というコレクションです。